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第6章

使命感をもって生きる!

──私の考える人類救済──

ひたすら行うことのすがすがしさ

通常、世間で呼ばれている「行」というものがあります。代表的なものに座禅や滝行、護摩を焚くなどが知られています。そのほかにも、山野を駆けめぐる廻峰行、断食、水ごりなども多くの人の知っている荒行です。

いままでも、とにかく体を動かすことの利点を強調してまいりました。そういう点で、私の立場は、宗教的な「行」ということではなく、とにかく体を動かすことに熱中するということです。そういう意味で、マラソンでもスポーツでも畑仕事でもなんでもいいわけです。

体を動かすことに熱中していますと、悩みの蟻地獄に入ってもがいていたことが嘘のように頭がほぐれてきます。「汗をかく」と前述しましたが、要するに夢中になって体を動かし、さわやかな汗をかくということです。

悟りを開くための行は、行そのものに意味を求めることです。いわば、行に取り組むことは、「知」を呼びこむための修行ということです。

天は「ただ繰り返しの行」を示しています。知を呼びこめば、逆に目が見えなくなるのです。

昔、地方に行って講演をしているとき、一人の農家の男性は私に「先生、貧乏人は働くことが精いっぱいで、行なんかやる暇なんかありません」と質問されたことがありました。

そのとき、私は、「なにも寺にこもって護摩を焚いたり、滝に打たれたりすることだけが頭をからっぽにすることではありません。一心に田畑を耕して働くことも、海へ出て魚を追うことも立派な行なのですよ」と答えたことを覚えています。

すなわち、何かに打ちこんで集中するということも暮らしのなかの行なのです。

ある人は悩み苦しみがあると、なにもする気が起こらず、戸を閉めきって布団の中にもぐり込んでしまうということを語っていました。しかし、その方法は最悪のやり方です。あまりのつらさに気力が湧いてこなくても、そこに鞭打って体を動かすところに救いの道があるのです。とにかく、体を動かしてみることです。

ラジオ体操でも、ジョギングでも、プールで泳いでもいいのです。とにかく体を動かしてみる、すなわち心をからっぽにして体を動かすことに熱中することです。

95歳の男性の老人に長寿の秘訣を訊いたとき、返ってきた言葉が「人生くよくよしないこと」でした。ある意味でありふれた答えで私は少しがっかりして、意地悪な質問をぶつけました。

「しかし、あなただって長い人生、まるっきり悩みがなかったわけではないでしょう?」

すかさず、返事がきました。

「そりゃあ、これだけ長い間生きてるんですから、悩みの(とう)や二十はありましたよ。それでも、とにかく寝るときに、この悩みは明日になってから考えようと、それまで悩みを頭から取り去って寝ることだけに集中しました。不思議なもんで、悩みの一時中止はできるんですよ。翌朝、さていよいよ悩み始めるかと思っても、明るい朝日の差しこむ窓を見ていると、タベあんなに悩んだことがつまらなく思えてきて、なるようになるさと腹がすわってくるんです。このようにして、私はくよくよしないで毎日を生きてきましたよ」

その老人は大きな声で笑いました。

この秘訣です。とにかく悩みを一時中止して、体を動かしてみることです。激しい運動をすれば、当然ながら肉体は疲労します。生理的に眠りを欲します。この繰り返しで悩みを軽くしていくのです。

《 目次 》
◆第1章 悔恨と懺悔の日々
 ──天が与えた私への試練──
◆第2章 絶望からの再起
 ──自らの役割を果たすために──
◆第3章 それでも「天の声」は聞こえた
 ──反省のなかの裁判レポート──
◆第4章 人がよろこぶ行為は自分のよろこびとなる
 ──他人の痛みは自分の痛み──
◆第5章 人間の絆こそ心のエネルギー
 ──美しき情の世界──
◆第6章 使命感をもって生きる!
 ──私の考える人類救済──