第2章
絶望からの再起
──自らの役割を果たすために──
再起に際しての決意
名誉を失墜し、
しかし、人間はどこまで苦しみに耐えることができるか、天は私を試そうとしているのです。
憂きことのなおこの上に積もれかし
限りある身の力試さん
山中鹿之助の歌といわれていますが、諸説がありたしかな作者は判りません。しかし、この際、作者の詮議をすることより歌の内容です。
「天よ、私にもっともっとつらい出来事をお与えください。そのつらさに私がどこまでも耐えられるか、私のかぎりある力を試してみたいのです」
この歌を心で口ずさむとき、私には言葉であらわせないような勇気が湧き上がるのです。
この世は四苦八苦の世界です。いろいろな苦しみが、生きようとする者の上にのしかかってまいります。その苦しみの上に、もっと苦しみを与えてくださいと神に祈るひたむきさこそが、修行者の大切な心構えということです。みずからが求めて、進んで苦しみのなかに入っていくという決意です。
私にとっての再起もまた、そのようなものでありましょう。
「天よ、苦しみをもっともっと私にお与えください。私は、その苦しみに真正面から向かいあって乗り越えてまいります」
私は、苦しみにたじろいだり後ずさりしたりは絶対にしません。これは己の心に刻んだ決意であります。
ドイツの劇作家ハインリヒ・クライストは「悪が善を意識させるように、苦しみはわれわれに喜びとは何かを教えてくれる」と語っています。
また、ドイツの偉大な文豪ゲーテも語っています。
人々よ苦しみの残していったものを味わえ!
苦難も過ぎてしまえば甘露となる
再起とは苦しみに立ち向かうということです。苦難の嵐のなかに船出をするということです。私の進む海路には何が待っているか判りません。
私の行く手にどんな苦難が降りそそいでも、希望の港にたどり着くまで私は航海を続けます。再起の海がいかに果てしなくとも、いかに波が高かろうが、私は必死に船を操り続けます。